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2026.01.25
『Swallowtail Butterfly Original Soundtrack』
1996年公開の岩井俊二監督作品『Swallowtail Butterfly(スワロウテイル・バタフライ)』は、日本映画史においても特異な存在感を放つ作品です。
多国籍・多言語が飛び交う架空都市「円都(イェンタウン)」を舞台に、移民たちの生き様と夢を描いた本作を、音楽面から支えたのが作曲家・小林武史です。
小林武史が紡ぐ、感動と癒しの音楽世界
この作品の音楽を手がけたのは、音楽プロデューサー・小林武史。彼が創り上げたオリジナル・サウンドトラックは、全曲インストゥルメンタルでありながら、言葉以上に雄弁に映画の世界観を語りかけてきます。
全13曲、約44分のアルバムの中から、特に心に深く響く5つの楽曲をピックアップしてご紹介します。
1. Theme of Yen Town ~Opening~
アルバムの幕開けを飾る本楽曲は、映画の舞台となる架空の街「円都(イェンタウン)」のテーマ曲です。物語の始まりを告げるこの曲は、希望と不安が入り交じった複雑な感情を見事に表現。小林武史の繊細なピアノと、徐々に膨らんでいくオーケストレーションが、これから始まる壮大な物語への期待を高めます。
静かに始まりながらも、どこか力強さを秘めた旋律は、異国の地で生きる人々の逞しさと、彼らが抱く夢への憧憬を感じさせます。
2. AGEHA Shows Up
3. Lolita
4. Dance of Fire
5. Heart of GLICO
主人公グリコの心情を描いた、アルバム中でも特に感動的な楽曲です。約4分という長さの中で、グリコの内面の揺れ動きが丁寧に描写されています。
温かく包み込むような旋律は、孤独と希望、愛と葛藤といった複雑な感情を優しく表現。弦楽器の繊細な響きと、ピアノの穏やかなタッチが織りなすハーモニーは、聴く者の心に静かに寄り添い、深い感動を呼び起こします。
6. Tomb
7. Heart of HIO
もう一人の重要な登場人物、フェイホンの心を描いた楽曲です。「Heart of GLICO」と対をなすこの曲は、より内省的で静謐な雰囲気を纏っています。
繊細なメロディラインと美しいハーモニーが、フェイホンの優しさと強さを同時に表現。ゆったりとしたテンポで流れる音楽は、日常の喧騒を忘れさせ、深い癒しの時間を提供してくれます。
8. China Restaurant
9. Magic Money
10. Gold Rush
円都に生きる人々の、富への渇望と夢を追い求める姿を象徴する楽曲です。タイトルが示すように、ゴールドラッシュのような熱狂と希望が音楽に込められています。
小林武史の卓越した編曲センスが光る本楽曲は、躍動感がありながらも、どこか切なさを感じさせる不思議な魅力を持っています。夢と現実の狭間で揺れ動く人々の心情が、音楽を通して鮮やかに描き出されます。
11. Ahen Street
12. Tatto
13. Theme of Yen Town ~Ending~
そして物語の終幕を飾るのが、この「Theme of Yen Town~Ending~」です。Opening と同じテーマを扱いながらも、まったく異なる表情を見せる本楽曲は、アルバム全体を締めくくる重要な役割を担っています。
約4分45秒という最も長い演奏時間の中で、Opening で提示されたテーマが壮大に展開。物語を通じて成長した登場人物たちの姿と、彼らが経験した喜び、悲しみ、そして希望のすべてが、この楽曲に凝縮されています。
感動的なクライマックスを迎えるこの曲は、聴き終えた後に深い余韻を残し、映画の記憶とともに心に刻まれます。
これら5曲に共通するのは、小林武史の卓越した作曲センスと、感情を音で表現する繊細な感性です。言葉を使わずとも、登場人物の心情や物語の情景が鮮明に浮かび上がってくるのは、彼の音楽表現力の高さの証明といえるでしょう。
オープニングとエンディングで対をなすテーマ曲、そして主要人物それぞれの内面を描いた楽曲たち。これらが織りなす音楽の旅は、映画を観た人には記憶を呼び覚まし、観ていない人には想像力を刺激する、普遍的な美しさを持っています。
小林武史が創り上げた「Swallowtail Butterfly」の音楽世界。ぜひ、その美しい旋律に耳を傾けてみてください。








